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意思決定構造・パワーチャート
ChampionとCoachの見極めがフォーキャストを狂わせる ─ パワーチャートで「影響力」を可視化する方法
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ChampionとCoachの見極めがフォーキャストを狂わせる ─ パワーチャートで「影響力」を可視化する方法

フォーキャストが外れる原因の一つに、顧客側の「導入推進者」を正しく見極められていないことがあります。好意的な担当者が必ずしも商談を前に進めてくれるとは限りません。本記事では、決裁者への影響力を持つ「Champion」と、好意的だが影響力を持たない「Coach」の違いを解説し、「権威性」と「影響力」の2軸で顧客内のキーパーソンを可視化する「パワーチャート」の活用方法を紹介します。
- 1.「手応えがあったのに進まない」商談の正体
- 2.ChampionとCoachの違い ─ 行動するか、しないか
- 3.なぜ役職だけでは判断できないのか
- 4.パワーチャートとは ─ 権威性と影響力の2軸で可視化する
- ANI(Authority, No Influence)─ 権威あり・影響力なし
- NINA(No Influence, No Authority)─ 権威なし・影響力なし
- IA(Influence, Authority)─ 権威あり・影響力あり
- INA(Influence, No Authority)─ 権威なし・影響力あり
- 5.パワーチャートで見極める4つのパターン
- 6.導入推進者を見極めるための質問
- 7.パワーチャートをフォーキャストに反映する
- 8.応援者を導入推進者へのアクセスに活用する
- 9.まとめ:影響力で評価し、フォーキャストに反映する
1.「手応えがあったのに進まない」商談の正体
「担当者との関係は良好だったのに、なぜか検討が止まった」「好意的な反応をもらっていたのに、突然競合に決まった」。このような経験は、法人営業に携わる方なら一度はあるのではないでしょうか。
こうした商談の多くに共通するのは、「導入推進者だと思っていた人物が、実は導入を推進する力を持っていなかった」というパターンです。
法人営業では、窓口となる担当者と、実際に導入を推進できる人物が異なるケースが頻繁にあります。担当者が自社サービスに好意的であっても、その人物が社内で影響力を持たなければ、商談は前に進みません。
この見極めを誤ると、フォーキャストの精度は大きく狂います。「確度80%」と記載した商談が、翌週には「検討保留」に変わる。こうした事態を防ぐためには、顧客側のキーパーソンを「役職」ではなく「影響力」で評価する視点が必要です。
2.ChampionとCoachの違い ─ 行動するか、しないか
法人営業において、顧客側のキーパーソンは大きく3つのタイプに分類できます。
導入推進者と応援者は、どちらも自社サービスに対して好意的である点では共通しています。違いは「実際に行動するかどうか」です。
導入推進者は、決裁者に対して導入の必要性を訴え、社内調整を主導し、時には他部門への展開を自ら進めてくれます。一方、応援者は「良いサービスですね」「ぜひ導入したい」と言ってくれるものの、いざ「では決裁者に相談しましょう」と提案すると、「今はタイミングが悪い」「自分の業務が忙しい」といった理由で具体的な行動には移りません。
営業として最も避けるべきは、応援者を導入推進者だと誤認し、その人物との関係構築に時間を費やしてしまうことです。応援者との会話は心地よく、自社サービスへの好意的なフィードバックは営業担当者の自信にもつながります。しかし、その人物が社内で動いてくれなければ、商談は一向に前に進みません。
3.なぜ役職だけでは判断できないのか
「役職が高ければ影響力がある」という前提は、必ずしも正しくありません。
例えば、長年その企業に在籍しているために役職が上がったものの、社内での発言力や意思決定への関与度が低い人物がいます。このような人物は、肩書き上は決裁者に近い立場にいても、実際に導入を推進する力を持っていません。
逆に、役職は高くなくても、専門知識や過去の実績によって社内で信頼を得ている人物がいます。このような人物は、決裁者が判断に迷った際に意見を求められる存在であり、導入推進者として機能する可能性があります。
つまり、顧客内のキーパーソンを評価する際には、「組織図上の位置」だけでなく「実際の影響力」を見極める必要があります。
4.パワーチャートとは ─ 権威性と影響力の2軸で可視化する
組織図では把握しきれない「実際の影響力」を可視化するためのツールが「パワーチャート」です。
パワーチャートは、縦軸に「権威性(Authority)」、横軸に「影響力(Influence)」を取り、顧客内のステークホルダーを4つの象限に分類します。

それぞれの象限に属する人物の特徴を解説します。
ANI(Authority, No Influence)─ 権威あり・影響力なし
組織図上は高い役職にいるものの、社内での実際の影響力が限定的な人物です。
例えば、長年その企業に勤続しているために昇進したものの、現場の業務から離れて久しく、意思決定において意見を求められることが少ない人物が該当します。
このタイプの人物は、応援者(Coach)である可能性が高いです。肩書きに惑わされて「この人なら導入を推進してくれる」と期待しても、実際には社内を動かす力を持っていないため、商談は進みません。
NINA(No Influence, No Authority)─ 権威なし・影響力なし
役職も低く、社内での影響力も持たない人物です。
例えば、入社間もない若手社員や、窓口として問い合わせ対応を担当しているだけの人物が該当します。
このタイプの人物も、応援者(Coach)にとどまる可能性が高いです。自社サービスに好意的であっても、社内で導入を推進する立場にありません。ただし、このような人物から「誰が社内で影響力を持っているか」「どのような承認プロセスを経るか」といった情報を得ることはできます。応援者は「情報源」として活用し、導入推進者へのアクセスを探る足がかりにしましょう。
IA(Influence, Authority)─ 権威あり・影響力あり
役職も高く、社内での影響力も持つ人物です。
例えば、事業部長や経営企画室長など、組織横断的な意思決定に関与し、決裁者からも信頼を得ている人物が該当します。
このタイプの人物は、導入推進者(Champion)として最も理想的な存在です。自社サービスの導入を推進する意思があれば、決裁者への直接的なアクセスや、社内調整の主導が期待できます。このような人物を味方につけることができれば、商談の進捗は大きく加速します。
INA(Influence, No Authority)─ 権威なし・影響力あり
役職は高くないものの、社内で影響力を持つ人物です。
例えば、特定の専門領域で社内随一の知識を持つエンジニアや、過去に重要なプロジェクトを成功に導いた実績を持つ担当者が該当します。決裁者が技術的な判断に迷った際に意見を求められる存在であり、その推薦は意思決定に大きな影響を与えます。
このタイプの人物も、導入推進者(Champion)として機能する可能性があります。特に、技術的な評価が重要な商談では、このような「技術面での導入推進者」の存在が成約の鍵を握ることがあります。
5.パワーチャートで見極める4つのパターン
上記の4象限をまとめると、以下のようになります。
商談において、主要な接点がANIやNINAの人物にとどまっている場合、その商談をフォーキャストに含めるべきではありません。たとえ「関係性は良好」「好意的な反応を得ている」と感じていても、導入を推進する力を持たない人物との関係だけでは、受注には至りません。
逆に、IAまたはINAの人物と接点を持ち、その人物が自社サービスの導入に前向きであれば、フォーキャストの確度を高く評価できます。
6.導入推進者を見極めるための質問
では、目の前の担当者が導入推進者なのか応援者なのかを、どのように見極めればよいのでしょうか。
以下のような質問や依頼を通じて、相手の反応を観察することが有効です。
影響力を確認する質問
「今回の導入検討において、最終的な判断をされるのはどなたですか?」
「過去に同様のプロジェクトを進められた際、どのような承認プロセスを経ましたか?」
「○○部門への展開を考えた場合、どなたに相談するのが適切でしょうか?」
行動意思を確認する依頼
「次回のミーティングに、情報システム部門の方にも同席いただくことは可能でしょうか?」
「本日の内容を、部門長の方にも共有いただけますか?」
「決裁者の方との面談を設定いただくことは可能でしょうか?」
導入推進者であれば、これらの質問や依頼に対して具体的な回答や行動で応えてくれます。一方、応援者の場合は「自分では判断できない」「今は難しい」といった曖昧な反応にとどまることが多いです。
重要なのは、これらの質問や依頼は「信頼関係を構築した後」に行うべきだという点です。初対面の段階で「決裁者に会わせてください」と依頼しても、相手は警戒するだけです。まずは相手に価値ある情報を提供し、信頼を獲得してから、見極めのためのアクションに移りましょう。
7.パワーチャートをフォーキャストに反映する
パワーチャートで顧客内のステークホルダーを整理したら、その結果をフォーキャストに反映します。
フォーキャスト確度の評価基準(例)
また、フォーキャスト会議においては、以下のような確認を行うことで、予測精度を高めることができます。
「この商談の導入推進者は誰か?その人物はIA/INAのどちらに該当するか?」
「導入推進者は具体的にどのような行動を起こしてくれているか?」
「決裁者へのアクセスは確保できているか?導入推進者が仲介してくれているか?」
これらの質問に明確に答えられない商談は、フォーキャストの確度を割り引いて評価すべきです。
8.応援者を導入推進者へのアクセスに活用する
応援者は、フォーキャストの観点では「確度を高める存在」ではありません。しかし、完全に無視すべき存在でもありません。
応援者は、顧客社内の情報を得るための貴重な情報源になります。
「誰が社内で影響力を持っているか」
「過去に同様のプロジェクトはどのように進んだか」
「導入に反対しそうな人物はいるか」
「どのような評価基準で比較検討が行われるか」
これらの情報は、応援者との対話から得られることが多いです。応援者から情報を引き出し、導入推進者の特定と接点構築に活用しましょう。
ただし、応援者に対して「導入推進者に育てよう」とするアプローチは、多くの場合うまくいきません。社内での影響力は、営業側がコントロールできるものではないからです。応援者は応援者として活用し、別途、影響力を持つ人物へのアクセスを模索することが現実的です。
9.まとめ:影響力で評価し、フォーキャストに反映する
フォーキャストの精度を高めるためには、顧客内のキーパーソンを「役職」ではなく「影響力」で評価する視点が不可欠です。
好意的な反応をくれる担当者が、必ずしも商談を前に進めてくれるとは限りません。その人物が社内で影響力を持ち、実際に行動を起こしてくれるかどうかを見極めることが、予測精度の向上につながります。
パワーチャートを活用し、権威性と影響力の2軸でステークホルダーを整理することで、「誰と関係を深めるべきか」「誰にアクセスを拡大すべきか」が明確になります。
導入推進者との接点がない商談は、フォーキャストに含めるべきではありません。応援者との関係だけで「確度80%」と記載しても、その予測は外れます。商談の「本当の現在地」を見極め、フォーキャストに反映する習慣を身につけましょう。
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