アカウントプランとは?書く項目・作り方・テンプレートと、よくある失敗

大企業を担当する営業責任者・マネジャー向けに、定義と作り方を実務の順に整理しています。

この記事では、アカウントプランの定義、書く項目、作り方の手順、テンプレートの構成、定例での使い方、よくある失敗と立て直し方を順に説明します。中でも「顧客側で誰がどう意思決定するか」の書き方に紙幅を割きました。アカウントプランを組織で運用する考え方そのものは、アカウントプランニングを成功させる営業哲学で詳しく書いています。

目次

  1. アカウントプランとは
  2. アカウントプランに書く5つの項目
  3. アカウントプランの作り方:6つの手順
  4. アカウントプランのテンプレート構成(7枚)
  5. 定例でアカウントプランをどう使うか
  6. よくある失敗と立て直し方
  7. よくある質問

アカウントプランとは

アカウントプランとは、重点顧客1社ごとに、目指す取引の姿と、顧客側の誰にどの順で働きかけるかを定めた営業計画です。

商談1件ではなく、その会社との取引を数年かけて広げるための計画で、顧客の事業を主語に書きます。対象は全顧客ではありません。複数の部門に取引が広がる見込みがあり、意思決定に多くの人が関わる重点顧客に絞って作ります。

なぜ大企業の営業で必要になるのか。理由は、1つの取引に関わる人が多いからです。HubSpot Japanが2026年6月に、従業員50名以上の企業で直近12か月のBtoB購買に関与した1,573人へ聞いた調査では、情報収集から決裁までに社内で5人以上が関わったケースは46.9%でした。従業員1,000名以上の企業に限ると61.6%です。担当者1人との関係だけでは、残りの人が何を基準に判断するのかがわかりません。

案件の計画との違い

アカウントプランとよく混同されるのが、商談1件を受注日まで進めるための計画(受注WBSなど)です。両者は目的が違うので、分けて持ちます。

観点アカウントプラン案件の計画
対象顧客企業1社商談1件
期間数年先まで受注予定日まで
答える問いこの会社との取引をどこまで広げるかこの案件をいつまでに、どう決めてもらうか
成果の測り方取引のある部門の広がりと、年間の取引額受注の可否と受注時期

アカウントプランの中から個別の案件が生まれ、案件ごとに計画を立てる、という親子の関係です。案件の計画だけを積み重ねても、その顧客で次に何を狙うかは決まりません。

アカウントプランに書く5つの項目

アカウントプランに書く項目は、次の5つです。各社の解説でも呼び方は多少違い、商機マップはポテンシャルマップ、アクションプランはアクションマップと呼ばれることもあります。

項目書く内容抜けたときに起きること
1. 顧客概要事業と業績、中期経営計画と重点施策、組織の構成、現在の取引と過去の提案の経緯顧客の優先課題とずれた提案になる
2. 目指す姿数年後にこの顧客とどんな取引関係になっていたいか、今期はどこまで進めるか目の前の案件を追うだけの計画になる
3. 商機マップ(ポテンシャルマップ)部門ごとの導入の見込み、予算の規模と時期の見立て次にどの部門へ提案するかが決まらなくなる
4. 意思決定の構造と関係者稟議の通り方、判断に関わる人、各人の役割・関心・賛否と、人と人の影響関係終盤に想定外の人が反対し、案件が止まったままになる
5. アクションプラン(アクションマップ)誰に、自社の誰が、いつ、何をするか。節目と見直しの時期計画が提出されただけで、次の行動に移されない

以下、書き方で迷いやすい項目4を詳しく説明します。

意思決定の構造と関係者をどう書くか

項目4は、「キーパーソン:〇〇部長」のような名前と役職の一覧で終わりやすい欄です。これでは、誰が何に賛成し、誰が何を懸念しているのかがわかりません。次の3つを書きます。

パワーチャートは、意思決定に関与しうる社内外の関係者が全員、役割とパワーバランスまで含めてひと目でわかる図です。上の3つを1枚に描くときに使い、アカウントプランの中では項目4の欄の本体になります。描き方の詳細はパワーチャートとはの記事で解説しています。

賛否は、根拠と一緒に書きます。「賛成」と書くなら、その判断のもとになった発言や行動(社内の説明会を自ら設定した、予算の確保に動いている、など)を横に残します。根拠がない人は「不明」のままにしておき、次に確かめる相手として項目5のアクションプランに回します。空欄を推測で埋めないことが、この欄を信頼できるものにします。

アカウントプランの作り方:6つの手順

作る順番は、項目の番号順とは少し違います。情報の手に入りやすいところから埋め、最後に打ち手へつなげます。

1. 対象アカウントを絞る

まず、アカウントプランを作る顧客を選びます。基準は、取引を広げる余地があること、意思決定に多くの人が関わること、担当者が定例で更新し続けられる数に収まることの3つです。数を欲張ると、どれも更新されなくなります。

2. 公開情報で顧客概要を埋める

統合報告書、決算説明資料、中期経営計画、役員一覧、人事異動の発表など、公開情報だけで顧客概要の多くは埋まります。ここで顧客の重点施策を押さえておくと、次の手順3で、目指す姿を顧客の事業に結びつけて書けます。

3. 目指す姿を、数年後と今期の2段で置く

数年後にどの部門とどんな取引をしていたいかを書き、そこから今期中に進めることを決めます。「生産管理部門に加えて、品質保証部門でも使われている」のように、顧客側の状態で書くと、チームで同じ絵を持てます。

4. 商機を部門ごとに洗い出す

顧客の組織図に沿って、部門ごとに導入の見込みを並べます。予算の規模や時期は、確かな情報と見立てを分けて書きます。見立てのまま数字が一人歩きすると、社内の期待だけが先に膨らみます。

5. 意思決定の構造を描き、賛否を置く

商機のある部門ごとに、稟議の通り方と関わる人を書き出し、パワーチャートにします。最初は分かる人だけで構いません。空いている席、つまり「この役割の人がいるはずだが、まだ名前が分からない」ところを明示することが、この手順の成果です。

架空の例:大手機械メーカーX社(企業・人物・状況はすべて架空です)

生産管理部から新システムの相談を受けている状況で、関係者を書き出すと次のようになりました。

関係者役割賛否と根拠
生産管理部長推進者賛成。社内の検討会を自ら立ち上げた
情報システム部長合議先不明。まだ会っていない
経営企画部長投資判断の起案者中立。前回の打合せで投資回収の期間を確認された
主力工場の工場長利用部門の責任者懸念あり。現場の入力が増えることを気にしている

この表から、次の打ち手が決まります。情報システム部長との面談を生産管理部長に設定してもらうこと、経営企画部長向けに投資回収の試算を用意すること、工場長には現場の入力がどう変わるかを実機で見てもらうことです。担当者の熱意だけを見ていたら、工場長の懸念には終盤まで気づけません。

6. 打ち手を「誰に・誰が・いつ」に落とす

最後に、手順5で見えた空席と懸念を、アクションプランに変えます。顧客側の相手、自社側の担当(役員、技術担当、パートナーを含む)、時期を1行ずつ書きます。自社の役員や専門部隊に動いてもらう必要があるなら、その依頼もここに書いておきます。

アカウントプランのテンプレート構成(7枚)

アカウントプラン全体をPowerPointで作る場合の構成です。本体5枚に表紙と変化の記録を加えた7枚です。この構成のテンプレート(架空の記入例入り)は、アカウントプラン テンプレートから無料でダウンロードできます。

スライド書く項目
1. 表紙対象アカウント名、担当営業とチームの構成、最終更新日と更新者、次回の見直し日
2. 顧客概要事業と業績、中期経営計画の重点施策、組織の構成、現在の取引、過去の提案の経緯
3. 目指す姿数年後の取引関係、今期の目標、顧客の重点施策と自社の提供価値の対応
4. 商機マップ(ポテンシャルマップ)部門ごとの導入の見込みと判断の根拠、予算(確認済みと見立てを分ける)、競合の状況、次の一手
5. 意思決定の構造と関係者稟議の通り方、関係者表(役割・背負っている目標・賛否とその根拠)、影響関係、空席の一覧
6. アクションプラン(アクションマップ)顧客側の相手、自社側の担当、実施時期、目的、社内への支援依頼
7. 変化の記録前回の見直しからの変化(異動、賛否の変化、新しく分かった人)とその根拠、更新者、次回の見直し日

7枚目の変化の記録は、アカウントプランが使われているかを判断する欄です。この欄が更新されていなければ、形骸化が始まっています。5枚目のパワーチャートを描く部分だけ先に試したい場合は、パワーチャートのテンプレートを使ってください。

持つ場所は、定例で画面に映して更新しやすいものを選びます。PowerPointやExcelなら今日から作り始められ、SFA/CRMに持てば商談や活動の記録と同じ画面で見られます。

定例でアカウントプランをどう使うか

アカウントプランは、作ったあとに定例で使われて初めて意味を持ちます。担当営業とマネジャーの定例で、1アカウントずつ次の順に確認します。

  1. 前回から変わったこと:人の異動、賛否の変化、新しく分かった関係者
  2. 空席と懸念:まだ会えていない人、解けていない懸念はどれか
  3. 次の打ち手:誰に、誰が、いつ動くか
  4. 支援の依頼:役員の同行や専門部隊の協力が要るか

定例は数字の進み具合から始めません。数字の報告から入ると、関係者の変化に触れないまま時間が終わります。更新は担当営業が行い、マネジャーは書き換えずに問いを返す、と役割を分けておくと、担当営業が自分の計画として持ち続けられます。

営業責任者は、重点アカウントを横に並べて比べます。商機の大きさだけでなく、意思決定の構造がどこまで分かっているか、推進者がいるか、懸念が解けているかを同じ観点で見ると、役員の同行や専門部隊の時間をどのアカウントに回すかを判断できます。

よくある失敗と立て直し方

作った時点で止まる

期初に提出して、次に開くのは翌年の期初、という状態です。原因の多くは、項目が多すぎて更新の手間に見合わないことにあります。

関係者の欄が名簿になっている

名前と役職は並んでいるのに、賛否も関心も書かれていない状態です。更新のたびに関係者についての見立てが変わっていないなら、それは計画ではなく、保存された名簿です。

自社の売りたい商品から書いている

目指す姿が「新製品を3部門に導入」のように、自社の商品を主語にして書かれている状態です。顧客の重点施策とのつながりがないため、顧客の社内で起案する理由が作れません。

決裁者だけを追っている

決裁者の名前が分かったところで安心してしまう失敗です。GartnerがB2Bバイヤー632人へ行った調査では、買い手チームの74%に不健全な対立が見られました。決裁権者を知ることと、チームの対立点や合意のつくり方を知ることは、別の仕事です。

担当者の頭の中にしかない

関係者の情報が担当営業の記憶にだけあり、異動や退職で消えてしまう状態です。技術担当やカスタマーサクセスが顧客と話した内容も、アカウントプランには入っていません。

形骸化したアカウントプランの立て直し方

一度止まったアカウントプランを作り直すときは、全項目を埋め直そうとしないことです。次の順で進めます。

  1. 意思決定の構造と関係者、アクションプランの2つだけを最新にする。顧客概要や商機は後回しでよい
  2. 定例の議題を、前の節の4つの確認に置き換える
  3. 更新するたびに、誰が、いつ、何を根拠に書き換えたかを変化の記録に残す

変化の記録が2、3回続いたかどうかを、立て直せたかの目安にしてください。

よくある質問

アカウントプランとアカウントプランニングは何が違いますか?

アカウントプランは作った計画そのものを、アカウントプランニングはそれを作り、実行し、見直し続ける営み全体を指して使い分けられることが多いです。書類を作るだけでは成果につながらないため、実務では両方をセットで考えます。アカウントプランニングの考え方は、アカウントプランニングを成功させる営業哲学の記事で詳しく書いています。

アカウントプランとABMはどう違いますか?

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、狙う企業を先に決め、その企業に合わせてマーケティングと営業の働きかけを組み立てる考え方です。アカウントプランは、その中で営業が顧客1社ごとに持つ計画にあたります。ABMで対象企業を選び、アカウントプランで1社ごとの目指す姿と働きかける順番を決める、という関係です。

どの顧客についてアカウントプランを作るべきですか?

複数の部門に取引が広がる見込みがあり、意思決定に多くの人が関わる重点顧客に絞ります。担当者が定例で更新し続けられる数に抑えることが前提です。

アカウントプランは誰が作り、誰が更新しますか?

担当営業が書き、更新します。マネジャーは定例で内容を問い、必要な支援を決めます。関係者の情報は、技術担当やカスタマーサクセスなど、その顧客に接する全員が書き足せるようにしておくと、担当者の頭の中にしかない状態を避けられます。

アカウントプランとパワーチャートはどう違いますか?

アカウントプランは顧客1社との取引全体の計画で、そのうち「意思決定の構造と関係者」の欄を1枚の図にしたものがパワーチャートにあたります。アカウントプランは、その図を踏まえて目指す取引の姿と次の打ち手を決めます。

まとめ

アカウントプランに書く項目は、顧客概要、目指す姿、商機マップ、意思決定の構造と関係者、アクションプランの5つです。中でも時間をかけて書くのは、関係者の賛否と影響関係です。作ったあとは定例で変化を確かめ、変化の記録が更新され続けているかで、計画が生きているかを判断してください。

PathLight:顧客企業の部署・関係者・力関係をパワーチャートにし、誰に、どの順で働きかけるかを決める

Salesforce・HubSpotの顧客情報を土台に、社内の接点と公開情報を照合してパワーチャートを自動生成します。現在のアカウントプラン、既存データ、Salesforce連携の状況に合わせて、PathLightの活用方法をご案内します。

本記事の調査データは、HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」(2026年6月実施、1,573名)、Gartner(2024年8〜9月実施、B2Bバイヤー632名、2025年5月7日公表)によります。記事中の企業例はすべて架空です。HubSpotはHubSpot, Inc.の、SalesforceはSalesforce, Inc.の商標です。