エンタープライズ営業を成功させるパワーチャートの活用方法を徹底解説!

エンタープライズ営業は、高収益や企業の認知度向上、売上安定化など、さまざまなメリットがあります。そんなエンタープライズ営業を成功させるためには、顧客の組織力学を理解し、可視化することが重要となります。本記事では、その必要性と、このプロセスを支援するパワーチャートの活用方法を解説します。
パワーチャートとは
パワーチャートとは、企業や組織内の意思決定構造や権力関係を視覚化するツールです。このチャートにより、誰が意思決定に大きな影響を与えるのか、どのような関係性が組織内で構築されているのかを明確に示すことができます。特にエンタープライズ営業において、複雑な顧客組織を理解し、適切なアプローチ戦略を立てる際に非常に有効です。

エンタープライズ営業におけるパワーチャートの必要性
エンタープライズ営業で効率的な営業活動を実現させるパワーチャート。その重要性を3つの側面から解説します。
早期に新規受注できる
数千から数十万人が在籍するような大組織に対して、窓口担当者のみに営業活動を行っても、多くの場合は決裁者にたどり着けず、受注獲得の可能性は低くなります。ここで、パワーチャートが重要な役割を果たします。顧客組織を視覚的に整理し、キーパーソンの特定や効果的な攻略ルート設計を可能にすることで、受注への道を切り開くことができるのです。

決裁者と推進者特定、意思決定プロセス理解
決裁者と、その提案を推進させる人の特定は、エンタープライズ営業を成功させるうえで、非常に重要なステップです。パワーチャートを活用することで、どの個人が提案に対する最終的な決定権を持ち、誰が影響力を行使するのかを明らかにすることができます。顧客の関係図を可視化すると、複雑な意思決定プロセスが明らかになります。そのプロセスをもとに営業戦略を策定し、最も効果的なアプローチを選択することができます。
長期的な関係構築の戦略を立てられる
エンタープライズ企業は、複数の大きな事業や新規事業を持っており、企業の状況や求めるニーズは絶えず変化します。これらの変化に対応しながら、長期的なパートナーシップを築くためにも、パワーチャートが必要です。パワーチャートを用いることで、どの部署にいる誰と関係構築をすべきなのか、明らかにすることができます。関係性を築き、継続的にアプローチし続けることで、受注のチャンスが生まれることでしょう。
パワーチャートが必要な営業組織
エンタープライズ営業といっても、商品やサービスの単価が比較的低く、一般社員が決裁を下せるケースでは、パワーチャートは必ずしも必要ではありません。しかし、ある条件下ではパワーチャートが極めて重要になります。まず、複数の意思決定層が関わるケースを考えてみましょう。経営層、事業部門、技術部門、財務部門、法務部門といった、異なる視点からの承認や意見が求められる場合です。こうした状況では、パワーチャートが組織内の構造を明確にし、適切なアプローチ方法を見出すのに役立ちます。
次に、製品の導入が与える影響について考えます。複数の部署が連携してプロジェクトを進める必要がある場合や、製品・サービスの導入が組織全体に影響を及ぼす場合には、パワーチャートを活用した営業活動が有効です。パワーチャートにより関連するすべての部門を可視化し、関係者を巻き込みながら営業活動を行うことができます。
最後に、意思決定プロセスです。異なる部署やチーム間での影響力のバランスを考慮して導入を進める場合、パワーチャートが必要です。この場合、内部の政治的な動きが意思決定に大きく影響することがあるため、複雑な関係性を理解し、適切な戦略を立てるためにパワーチャートを活用しましょう。

パワーチャートの必要性を、マーケティングシステムの導入を例に考えてみましょう。システムの導入は、マーケティング部門だけでなく、情報システム部門、場合によっては営業部門も関与することになります。ここで、パワーチャートを活用して各ステークホルダーの関与を明らかにし、効率的なコミュニケーションと合意形成がとれるよう、営業活動を行う必要があります。
パワーチャートの活用ステップ
パワーチャートの必要性と自社が必要かを確認したところで、実際に使えるように具体的な活用ステップをご紹介します
活用目的とKPI設定
パワーチャートを利用する際には、その運用目的をはっきりさせることが重要です。目的が新規受注の獲得か、それとも顧客との継続的な関係構築かによって、戦略やアプローチ方法が変わってくるためです。最初の段階で具体的に何を達成したいのか、どの情報を明らかにしたいのかを明確にし、それに基づいてパワーチャートの活用方法を計画することが求められます。
次に、目標を実現させるための指標としてKPIを設定しましょう。ターゲットへのアプローチや接点を持つ目標回数などを決めておくことで、アクションを起こしやすくなります。
顧客への自社独自の提供価値設定
自社サービスが顧客にとってどのように独自の価値を提供できるかを明確にすることが、エンタープライズ営業の成功には欠かせません。たいていの場合、市場には同様のサービスを提供する競合が存在し、競合もエンタープライズ営業を展開しています。そのような環境では、自社独自の価値を設定し、差別化しながらサービスを提供しなければなりません。
このプロセスは、はじめは顧客の企業や事業など組織単位で設定し、ステークホルダーを見つける度に価値を言語化しながら訴求していきます。それぞれの相手にあわせて、自社独自の価値を提供しましょう。
パワーチャートツール選び
パワーチャート作成ツールの選定は、エンタープライズ営業の効果を大きく左右する要素です。適切なツールを選ぶ際には、次の5つのポイントを念頭に置きましょう。
1つ目は、ツールが営業活動の目的に合致していることです。キーパーソンの特定や関係性のマッピング、コミュニケーション履歴の管理など、必要な機能が備わっているかが重要です。
2つ目は、ユーザーインターフェース(UI)の使いやすさです。パワーチャートは、チーム全員が使いこなせなければ導入の意味がありません。直感的で分かりやすい操作性があることが非常に重要です。
3つ目はCRMとの連携能力です。SalesforceやHubSpotなど、既存のCRMシステムとシームレスに連携できれば、情報の一元管理と作業の効率化が実現します。
4つ目は拡張性です。組織の成長に伴い、ユーザー数やデータ量が増加しても、ツールがそれに対応できるかどうかは、長期的な視点で非常に重要です。
最後に、セキュリティレベルの高さを確認します。企業の重要な情報を扱うため、データ保護の対策が十分に施されているかを検討することは不可欠です。
これらの要素を総合的に考慮して、自社のニーズに最も合ったパワーチャートツールを選ぶことが、エンタープライズ営業の成功への鍵となります。
顧客組織攻略ルートの設定と社内関係者共有
エンタープライズ営業を成功させるためには、顧客組織の攻略ルート設定が欠かせません。まずは、Web情報を基にして、どの部門のどの役職者が推進者になり得るかを見極めます。この初期段階で形成された仮説をもとに、どのコミュニケーションチャネルを通じて、どのようにアプローチを進めるかについて、計画を立てます。
この計画を社内の上司や関連する役員と共有し、チーム全体の共通認識を確立することが重要です。この際、パワーチャートに内容を落とし込んでおくと、非常にわかりやすく共有することができます。
その後、具体的なアプローチ方法についてチーム内で調整を行い、営業戦略を実行に移しましょう。
収集するデータを決めること
ターゲットの顧客にアプローチするうえで、受注を実現するために必要な条件を予測し、それを満たすデータを明確にします。たとえば、以下の点をチェックします。
決裁者の情報
決裁に関わる部署
各組織の基本情報や方針
顧客が利用しているサービス
購買に至るまでのリードタイム
これらの情報の集め方から考えて、実行に移しましょう。必要なデータを集めたら、CRMのシステムに情報を入力したり、パワーチャートに記載したりして活用していきます。
ステークホルダーの整理
大企業への営業は、中小企業とは異なり、多くのステークホルダーが関わる複雑なプロセスです。これらのステークホルダーを理解し整理することが、成功への鍵となります。ステークホルダーは大きく5つのカテゴリーに分類できます。
1. 決裁者
企業の戦略的方向性を決定し、大規模な投資や購入に関する最終的な承認を行う役割です。CEOや検討部門管掌役員、事業責任者などが該当します。
2. 推進者
組織内での意見形成者として機能し、その導入を積極的に推進する人を指します。担当の部門長や課長、主任が担うことが多く、そのプロジェクトや製品の価値を広めるために重要な役割を果たします。
3. 影響力を持つ者
決裁者に対して意見や推薦を提供し、決定プロセスに間接的に影響を及ぼします。多くの場合、専門知識、経験、または業界内での地位によって決裁者から信頼を得ています。シニアマネージャーや顧問、業界アナリストなどが該当します。
4. ユーザー
製品やサービスを直接使用する人々で、その使い勝手や機能性、パフォーマンスに関してフィードバックを提供します。ユーザーの満足度は、製品選択や継続的な使用に影響を与えます。エンドユーザーやオペレーションスタッフ、ITスタッフなどが該当します。
5. ゲートキーパー
情報の流れやアクセスを制御する役割を持ち、どの情報が決裁者や影響力を持つ者に届くかを管理します。決裁者に届く前に、提案書がチェックされる場合があります。秘書やアシスタント、情報技術(IT)セキュリティマネージャーなどが該当します。
これらのステークホルダーを適切に理解し、それぞれに合わせたアプローチを計画することで、大企業への営業活動がスムーズに進みます。

推進者の特定
エンタープライズ営業では、顧客の組織内でサービス導入を前進させる「推進者」の役割が極めて重要です。この推進者とは、自社のサービスに深い共感を抱き、その導入の必要性を強く感じている人物のこと。組織の中で、各ステークホルダーに自社サービスの価値を力強く主張できるだけの説得力を持っています。
推進者は、ただ自社の提案に賛同するだけではありません。必要に応じて、自社サービスの導入に関わる推進者を紹介し、営業チームが集めた情報を基に、積極的に顧客組織内での課題解決に取り組んでくれる存在です。彼らは、提案が内部の意思決定プロセスをスムーズに進むよう促し、最終的な承認を得るための架け橋となります。
推進者の特定には、顧客との密接な関係構築が必須です。顧客のビジネスに真の関心を持ち、そのニーズや課題を深く理解することが、推進者となり得る人物を見極める第一歩となります。また、彼らが自社サービスの価値を内部でどのように伝えているかを観察し、適切なサポートを提供することが、長期的な成功へとつながります。
項目の定期更新と攻略状況の振り返り
パワーチャートを用いて、月に1度ほどのペースで定期的に進捗状況を確認しましょう。パワーチャートの内容は、週次や月次で更新すべき項目を事前に決めておき、更新した内容をもとに振り返りを行うと効果的です。
振り返りの中で、どのように目標に近づいているか、どの戦略が効果的であったか、または調整が必要かを話し合い、持続的に営業活動を行う必要があります。
他社事例
最後に、パワーチャートを用いたエンタープライズ営業の成功事例をみてみましょう。
ベルフェイス株式会社
電話面談システムを提供するベルフェイス株式会社は、金融機関を対象にエンタープライズ営業を行い、2年間でARR(年間取引単価)を6.5倍に成長させました。ベルフェイス株式会社は「大規模案件の有効商談化率を最大化させるために、事前に踏むべき3つのステップ」として、以下の3つを挙げています。
①プロジェクト類型の見極め
②顧客への提供価値の言語化と、導入可能サイズの具体化
③攻略ルートの設計
このうち、「③攻略ルートの設計」において、パワーチャートが重要な役割を果たしました。
攻略ルートの設計は、意思決定プロセスを理解し、誰にどのような働きかけを行うべきかを明らかにするために重要なステップになります。正しい攻略ルートを設計するためには、組織全体の相関図を俯瞰できるパワーチャートの作成が重要です。
参考:エンプラ営業に活路を見出したベルフェイスの『営業プレイブック』を大公開
株式会社プレイド
CXプラットフォーム「KARTE」を運営する株式会社プレイドは、ゼロからエンタープライズ営業組織を立ち上げ、成功を収めています。
エンタープライズ営業は、瞬発性が求められるSMB(中堅・中小企業)営業とは、性質がまったく異なります。ステークホルダーの関係性を捉えて営業の戦略を練り、持続的に営業活動を行わなければなりません。ここでは、関係性を捉えるためにバイヤーの相関図を可視化すること、つまり、アプローチする企業のパワーチャートを作成することを重視しました。
株式会社プレイドでは、組織立ち上げ直後からパワーチャートを活用したことで、エンタープライズ営業の成果を出すことができました。
参考:株式会社才流『エンタープライズセールスに向いている人とは?新規事業も創出できる「エンプラセールス」の可能性』
Box Japan
コンテンツ管理プラットフォームを提供する外資大手企業のBox Japanでは、9期連続でARR成長を成し遂げており、エンタープライズ営業にも成功しています。ここでは、エンタープライズセールスの「型」を生み出し、季節ごとに行う4つのアクションを実行しています。
1つ目は、期初に多くのパイプラインをつくり商談を発生させることです。
2つ目は、案件発生からクロージングまでのプロセスを16段階に分けて、各ステップにおける行動を可視化させることです。
3つ目が「MEDDIC+RW」。MEDDICにリスク管理と、なぜ(Why)を組み合わせた「MEDDIC+RW」というBox Japan独自のフレームワークを作成しました。営業が「握れています」と言っていても、実は窓口担当者しか押さえられていないケースは多いものです。こうした事態を防ぐために、抑えるべきポイントをフレームワーク化しています。
4つ目が「戦術カタログ」です。顧客の組織図を確認しながら、戦略ルートを設計します。当たり障りのない提案ではなく、本当に価値訴求ができる提案にするために、欠かせないステップです。この戦略ルート設計のために、パワーチャートが必要となります。
参考:Sales Zine『9期連続ARR成長を成し遂げたBox Japanに学ぶ、エンタープライズセールスの「型」とは』
まとめ
エンタープライズ営業におけるパワーチャートの重要性と活用法を解説しました。エンタープライズ営業の成功は、顧客の組織を理解し、戦略的にアプローチすることが求められます。パワーチャートは、複雑な顧客組織内の構造と力関係を可視化し、攻略ルートを設計するための強力なツールとなります。しかしながら、パワーチャートはあくまでツールであり、エンタープライズ営業を成功させる手段の一つです。運用すること自体が目的になってはいけません。目的に沿った活動を長期的に行い、営業成果を上げるようにしましょう。
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